コラム

仕事の知恵袋

2019年9月16日◆ ◆ 企業成長によって発生していく根源の問題点 ◆ ◆

会社は社員が増えるから成長するのではなく・・・

30人未満企業の経営スタイルは「社長こけたら皆こける状社長絶対依存経営」である。社長の背中を見ながらの一体感が強く、風土としては良好であることが多い。しかし、これからの成長に必要な会社のルール・基準のない「思いつき経営」なので、個人商店の集合体になりやすい。
 
今回は、30人未満企業のA社を企業診断した時の状況をご紹介します。
 
*診断とは、いわば企業の「人間ドック」のようなものであり、第三者的な立場から企業の現状を分析します。そして、現状の問題点の指摘からより良い方向へすすむための改善の具体策を提案させていただきます。
 
■社長絶対依存主義で社長こけたら皆こける状態
A社は、平成中盤の3年間で年商が倍以上に急成長した生産財機器製造メーカで社員数は25人である。経営者は創業者で典型的な技術屋社長で、このA社は社長絶対依存主義で社長こけたら皆こける状態であった。古くから社長とともに頑張ってきた主な幹部クラスは社長との一体感が強く、風土としては良い状態である。
 
■急成長の歪
しかし会社内のルール・基準がなく成長したので、以下の問題点が噴出していた。
 
●「経営方針がわからない」とする社員が77%
●「計画の変更が多い」とする社員が60%と高い。
 
会社としては方針・計画を明確にしたいと考えても、その方法がわからなかったり、明確にしても定着せずに、うまくいかないから途中で止めてしまう。この繰り返しであった。
 
●「命令系統が乱れている」とする社員が54%
●「上司の指示が不適切である」とする社員が72%
●「責任の所在がはっきりしない」とする社員が93%
 
現場での人・チームを動かすマネージメントが混乱している様子がうかがえる。この規模になれば、部門ごとに「長」は立てられるが、現場の実務を指揮する監督者が不足する。このA社も必要人数の50%が不足していた。
●現場の実務を指揮する機能がないと、どうしても現場は混乱する。
●そして退職者が多くなる。
●足りないから募集するが、同じことの繰り返しで、また退職者が増える。
 
つまり、業務手順などを規定した「A社固有の仕事の基本」がない。
●仕事の基本がないと新人を教えることが難しくなる。
●そして、忙しいから自分で覚えろと突き放すために悪循環になる。
ご多分に漏れず、この会社も「退職者が多い」とする社員が75%と多かった。
 
■企業成長によって発生していく根源の問題点
 
売上高・従業員数が伸びて、それに見合う組織体制・機能が未発達である場合は、利益率、1人あたりの生産性、資金の回転性がアンバランスな状態となる。このA社も成長前と成長後を比較すると、成長性を示す経営数値はよくなっていたが、収益性・回転性・安全性・生産性は悪化していた。
 
 会社は社員が増えるから成長するのではなく、『仕事の数が増える』から成長していく事が企業成長の原理・原則。どうしても、この原理・原則にすぐに対応できないから、会社に問題点が発生する。これは年商30兆円企業のトヨタでさえ同じ。
 
●設備投資を先行して行い、リターンがやってくる。
●リーターンがやってきて、『人・組織・経営態』への対応が始まるから、上記のような問題が生まれる。
 
 
 
ご参考にしてください 以上
                                                                         マイスター・コンサルタンツ株式会社
                                                                            代表主席コンサルタント 小池浩二
 

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