コラム

継栄の軸足

組織の取組む姿勢

今回の件で食中毒などの被害者は一人も出ていない。なのに、叩かれる。ここにこの問題の本質がある。

■創業100年を目の前にして

1910年に創業したある会社の社名は、創業家である藤井家の「藤」と日本のシンボルである「富士山」、そして「二つと無い存在に」(不二)から不二家と名づけた。
そう、世間を騒がしたあの不二家である。

シンボルマークであるファミリーマークのFには、不二家のイニシャルのほかファミリア(親しみやすい)、フラワー(花)、ファンタジー(夢)、フレッシュ(新鮮)、ファンシー(高級な・かわいらしい)の5つの意味が含まれているそうだ。

イメージマスコットは、国民的なペコちゃんとポコちゃん。キャッチコピーは、「おいしさは、しあわせに向かう」である。

騒動の内容は、2006年10月と11月の計8回にわたって、埼玉県新座市の同社埼玉工場でシュークリームを製造する際に、消費期限が切れた牛乳を使用していた。
このことは、同年11月までに社内プロジェクトチームの調査によって判明していたが、不二家では「マスコミに知られたら雪印乳業(雪印集団食中毒事件)の二の舞になることは避けられない」と隠蔽指示する内部文書を配布するなどして、自らは公表しなかった。
結局このことは、洋菓子需要の繁忙期であるクリスマス商戦を乗り切った後の2007年1月10日に、内部告発を受けた報道機関の手により公になった。

■問題の本質

しかし、今回の件で食中毒などの被害者は一人も出ていない。
なのに、叩かれる。ここにこの問題の本質がある。つまり、結果論ではなく組織の取組む姿勢を問われたのである。

食品メーカーの一つの尺度として「そこで働かれている社員達が工場で製造した物を日常的に食べている」メーカーは安心出来る。
それは安いからではない。家族が食する物に悪い物を食べさせようとする人はいないし、家族に対して自分の会社・工場を誇りに出来るから、その証として食べるのである。

今回の騒動の発端は良心の呵責に悩んだ一社員からの内部告発である。

組織には「相互補完機能」と「牽制機能」の両輪が成立して、機能する。
重要な風土は「その人の人間性は信用するけれど、その仕事の内容までは信用しない」である。
つまり、チェック&コントロール機能である。

世の中には、ほぼ完璧に近いといわれる商品はあるが、完璧な商品はない。
世界に冠たるトヨタにしても、同車モデルチェンジを行うのである。完璧な商品なら、モデルチェンジの必要性がない。

完璧な商品、サービスは存在しない。だから、開発・改良・品質向上のレベルが上がってきたし、違う視点から見ると完璧な商品・サービスはないから、基本動作のひとつに『クレーム処理』がある。

今回は商品、サービスではない組織の取組む姿勢が問題となった。確かに商品・サービスのクレームなら対応次第で取引継続となるが、組織の取組む姿勢画クレームなら取引継続は難しいであろう。

重要な事である。

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